12/4のねこさん 文は田島薫
ひとりぼっちの黒とら
土曜日の午後は給湯器の修理が来ることになってたんで、食料の買い出しは私ひとり
自転車で出かけた。ねこよこちょう入口角の家の庭をのぞくと、いつものようにテラ
ス手前の縁台に黒とらが後ろ向きに座ってたんだけど、今回はいつもより少し臥せる
ような少しだらしなく座っていた。2軒の店で買い物済ませて戻って来たら、黒とら
は右手前の植え込みの芝生の上に移動していて今度は道路の方を見てるんで、私は、
よ、って手を上げてあいさつして通り過ぎた。
いやいや、さみ〜ね〜、こ〜やってここで兄貴が出てくんのずっと待ってるんだけど、
これが、いつんなってもず〜っと出てこない、つーとぼくはここでこごえ死んじゃ〜
かもしんないね〜、そ〜言えばなんだか眠くなって来たね〜、やばいっ、眠っちゃい
けないっ、眠ったら死ぬ、う〜、やばいっ、だめだだめだ、ここにいては命があぶな
い、ちょっとこっちのやわらかいあったかそ〜な草の方へ行こ〜。よいしょ、ん〜ん、
さほどあったかくないね〜、でもさっきよりか目の前通るもんをながめてれば眠気が
とれそ〜だから、この調子で目をきっちり開けておいて、時々、兄貴が出て来た時わ
かるよ〜にあっちをふり返ることにすっか、お、見たことあるやつが、ぼくを見なが
ら手を上げてったね。ど〜ゆ〜ことだろ〜ね〜、意味がわかんないね〜。