5/2のねこさん        文は田島薫

久しぶりのグレー


近所のスーパーへ行く途中の稲荷神社となりの家にたいていいつもいたグレーがこのひ

と月ばかり行方不明になってて、そこの奥さんが心配してたんだけど、グレーは他のふ

たりのミケと違って、そば通る人にはだれにでも愛想ふりまくねこさんなもんだから、

きっと今ごろだれかに飼われてるんだろう、ってわれわれは思っていた。そんな先週の

終わりごろ、私が事務所にいると、ガラス戸の向こうの道路からわが家の雑草の庭を無

造作に歩くグレーがいるのに気がついた。お、って少し慌ててガラス戸を開け、ガラス

の端をコンコン、ってたたいて合図を送ると、グレー立ち止まり、こっちを見たんだけ

ど、よ、って手を上げる私を不審そうに見てるだけ、やがて、小走りに道路向かいのア

パートの自転車置き場に入ってからまたこっちをじっと見てるんで、また、よ、って、

手を上げて合図してたら、前にもグレーがしてたと同じように、そばの貯水タンクの下

に入った。私は家人を呼んで、家人はそっと外へ出て、タンクの下をのぞきに行った時

にはもういないようだった。


ぼか〜なんだかここずっと夢のよ〜ない〜暮らししちゃってんだよな、い〜おね〜さん

と知り合っちゃってさ、毎日うんまいもん出してもらえるもんで、あいつらんとこへ帰

れなくなっちゃってさ、だって、あそこじゃ、わざわざ行って食いたい、ってほどのも

んをおばさんが出してくれてるわけじゃないし、行ってあいつらにこっちのうんまいも

んのその話したらさ、じゃ、おいらたちも、ってことになっちゃうだろ多分、そーすっ

と、おね〜さん、こまらしちゃうだろ。しかし、めずらしくちょっと散歩でここらへん

来んのも久しぶりだな〜、なんだか何度もここへ来たことあった気がすんだけど、なに

しに来てたんだったけかな、シッコかな、じゃ、シッコでもして行くかなここの草んと

こにでも、つってると、お、だれかが顔出してなんか言ってるぞ、え?ぼくのこと知っ

てるよ〜なこと言ってる感じだけど、はて?だれだったけかな?とりあえず、こっちの

方へ逃げておいてから、じっくり顔見て思い出そうかな、ん〜ん、遠すぎて余計だれだ

かわかんないね〜、ま、いっか、あんましたいした用でもないようだし。


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