11/16のねこさん 文は田島薫
箱から出られない 2
先週の雨の土曜の午後、家人と傘さして食料の買い出しに行く途中の稲荷神社となりの
家の狭い庭。きょうは3個ある発泡の箱の上に何本かのビニール傘があって、それぞれ
の中にねこさんがひとりづつ入って全員集合。とりあえず一番近いミケの大きい方に声
かけて知らんぷりを確認後、向こうからこっち見てるミケの小さい方に、よ、って手上
げて合図してから、奥のまだこっちに気づかないグレーの方に垣根を回って外から、気
がついたグレーに、よ、ってふたりで手を上げたら、今度はみんなでこっちを見てる。
こっちもだまって見てても、ねこさんたちの方もだれも箱から出ようとしないんだけど、
事情がわかってるわれわれは、じゃ、って別れた。
いやいや、腹減ったね〜、きょうはさみ〜上に雨まで降っちゃってて、これじゃ、どこ
へも出かけらんね〜な〜、こ〜、じっとしてると、よけ〜さみ〜し、とりあえずごはん
はやく食わないと、凍え死んじゃうかもしんないね〜、おばさ〜ん、はやく、ごはん、
くれ〜、ご、は、ん、ご、は、ん、…いかん、声出すとよけ〜腹減っちゃう、だまって
よ〜。こ〜やって、じっと、動けないとこに、まさか、あの2人組なんか来たりしね〜
よな〜、おいおい、やめてくれよ〜、つってるとこに、まさかの2人組がいつのまにか。
いやいや、これはぼくの見間違い、ないものを見てしまったんだね、やだなやだな、っ
て思ってると、よけ〜見えちゃったりするんだよな、まぼろし、まぼろし。