7/28のねこさん 文は田島薫
見返りねこさん
先々週だったか、図書館へ行く高台の道を家人と歩いてると、いつのまにかどっかから
小さいとらねこさんが出て来て、われわれの10メートルぐらい先を先導するように歩き
だした。われわれは、聞こえないだろうな、って思いながらためしに舌でちょっちょっ、
って合図してみると、ねこさんすぐに立ち止りふり返った。われわれは歩調を変えずに
歩いてるもんで、ねこさんんも、すぐに前を向き歩きだした。で、また、ちょっちょっ、
って合図すると、また同じように立ち止りふり返る、またすぐに歩きだし、また、ちょ
っちょっ、って、立ち止りふり返り、歩きだしやってるうちにそばのモダンなつくりの
アパートの塀のすきまに入った。われわれがそこに追いつき、塀のすきまからのぞいて
みるとねこさんの方も3〜4メートル奥のコンクリの塀の狭い台の上にいてこっちを見て
る。しばらくおたがいの顔をながめあってから別れた。
いやいや、ここんとこずっと、すげーあっちかったもんで、外出んの久しぶりだな〜、
ここの静かな道をちょっと歩いてって、このすぐ先の原っぱで虫さんでも追っかけて遊
ぼ〜かな〜、いや〜、楽し〜ね〜、うきうきしちゃって、知らないうちに急ぎ足んなっ
ちゃうね〜、耳すますと、も〜、虫さんの声が聞こえそうだね〜、ほら、ちょっちょっ、
って、うしろから、ん?うしろから?なんだ変なのがついて来てんじゃね〜の、あれが
音だしてんの?なんだってんだ、行こ行こ、ん、また音すっから、思わず立ち止ってふ
り返る、ってと、変なのがまだついて来てる、行こ行こ、って、また、音すんで、おい
おい、そんな遊びおもしろくないよ、ぼか〜、追う方が好きなんであって追われるのは
だ〜い、っきらい、なんだかんな、ば〜ろ〜、原っぱあったけど、ここで追われるのは
もっとやだから、ここのすきまからかくれちゃお〜、さて変なのが行き過ぎるのを待つ
ことにすっか、あり?行き過ぎないでこっち見てやがる、しつこいぞ〜、んにゃろ〜。