2/10のねこさん        文は田島薫

家から逃げたねこさん


明日は大雪だ、っていう週末の午後、家人と自転車で食料の買い出しに行く途中のねこよ

こちょうはずれの家。T字路の正面の垣根のすきまからパステルトーンのねこさんがこっ

ち向いて座ってるのが見えた。お、ねこさんだ、って言って、いつもならすぐ右折してし

まうところを、ゆっくりと近づいてから自転車止めてふたりでそれをながめた。

ねこさん、ちょっとびっくりした顔して固まっている。こっちがちょっと近づくまねする

と、びくっ、って体を移動させようとするんで、こっちもやめて、また、こっちが動くと

向こうも、びくっ、て動こうとする。それを何回かやってると、とうとう、ねこさん垣根

から飛び出して、われわれより先に右手の方へ走って行った。ねこさんちょっとこっちを

ふり返ってからそばの家の奥へ続く数10センチのすき間を向こうへ歩いて行った。


いつも家ん中にいるんだけど、たまにこーやって外の空気吸うのもいいもんだね〜、この

はっぱのすき間から遠く向こうの方から来る空気をさ、あり? 空気とちがうもんが向こ

うの方から来るぞ、なんだなんだ、ありゃ、ぼくの前で止まっちゃった。もっとも、こん

なのが止まらないで、ぼくの鼻の中まで飛び込んで来られちゃ困るけど。お、動いた、や

ばい、ぼくにぶつかろ〜、ってのか?まてよまてよ、お〜っと、また動くか、やばいっ。

こ〜なったら、逃げろ〜、ととととと、しかし、なんでじぶんちから逃げなきゃなんない

んだ〜? ま〜、あのへんなのにぼくんち教えない、ってことで、裏から帰るか。


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