10/27のねこさん 文は田島薫
芸大のバットマン
昨日の日暮前、上野の芸大の裏の小さな老舗和菓子店で家人とふたり抹茶飲んでると、
格子戸の道路隔てた向こうの芸大の庭木の下にねこのバットマンがいた。
ねこさん、のんびり毛づくろいしたりしてるのをながめてると、今度は樹に前足かけて
つめとぎのようなまねしてて、さて、って店を出ようとするころ見えなくなっていた。
どこ行っちゃったかな、ってふたりでフェンスのそばまで来て中を探したら、すぐ先に
ある建物の壁の下にいて、こっち向いてたんで、よ、とか、ちょっちょっ、とか呼びか
けるとこっちに気がついて、不審そうな目でこっちをじっと見てそのまま固まってる。
いやいや、い〜んだよな〜このあたりは静かでさ、樹さんもいっぱいあって空気もうま
いっ、だれにもじゃまされない、このぼくだけの場所で、こ〜、のんびりと毛づくろい
したり、ほら、こ〜やってつめとぎしたり、す〜、って深呼吸したり、さて、あっちの
陽あたるとこ行って、小鳥さんの歌でも聞きながら昼寝でもすっかな、お〜、い〜ね〜、
ぽかぽかと、ちょーどい〜あったかさで、こ〜、まぶたも自然に落ちて来て夢ん中、小
鳥さんの歌声も聞こえてきて、お、とか、よ、とか、ちょっちょっ、って、…ん?なん
だ〜?あり?向こうのあの怪しい2人組がこっち見てなんか言ってたのか、おいおい、
きみたちはなんの用なんだい?だめだよ、ここはきみたちのようなガサツなのが来るよ
うなとこじゃないんだかんな、美しい音楽と小鳥の歌だけの場所なんだかんな。