9/21ののらねこ 文は田島薫
連休明けの今朝は皿が空になっていたものの、お客さんの姿は見えない。エサを入れておいたが午後になってもそのまま、今週秋分になるっていうのに、
気温が32度もあって、夏負けの体に残暑がきついのだろう。
この頃は涼しくなる夕方にばたばた、と団子状にお客さんがやって来る。
先週の木曜に映画プロデューサーの尾形さんと事務所でスーパーの安売りで買ったさんまを肴に飲んでいると、いつの間にかバットマンが入って来ていて、
あ、さんまの匂いのおかげかな、って一瞬思ったんだけど、全然それは彼の
眼中にないようで、そればかりか、われわれも眼中にないようで、見てると、
尾形さんの椅子の足下をすり抜けて、仮眠用のふとんが収納されている場所に
入って行こうとしている。
おい、バットマン、どこ行くんだい、そっちはだめだめ、と体の向きを反対に回転させてやったら、素直にそのままドアの方へ歩いて行き、少し開いていた
隙間から出て行った。
ねこにさえ無視された安売りのさんまは脂気がなくて、味がいまひとつだった。われわれはそんなこと言いつつ全部食べ、残った骨をエサの皿に入れて帰った。
翌朝来てみると、皿は真っ白にきれいになっていた。おー、やっぱりねこさんはさんま食べてくださった、って喜んで、朝1のシャン
さんに確認してみると、よく聞いてくれた、って顔で、まるまるの骨が2本、
ドア前の床に散乱していたのでかたづけて、掃除しておいた、と言った。
(私だったら、また皿に戻しておくとこなんで)捨てちゃったんですか?
って少し不満気に言うと、今のねこは魚の骨なんか食べないよ、と少し強い口調
で断言されてしまった。
何度か同じように掃除しているシャンさんにとって、ねこに骨出されることは、
自分や隣に余計な仕事をつくるだけのことなのだ、って顔に書いてあった。
こりない私は、また出しちゃうと思うけど、よろしく、って言った。