11/8ののらねこ         文は田島薫


新しいひとたちと古いひとたち

秋晴れの気持のいい天気だけど、お客さんの姿は見えないようだ。

皿はいつもの通り土日休みの間に空になっているんだけど、だからねこさんが

食べた、っていう保証はない、カラスさんもよく来るからだ。

さっきも、屋上に置き放しにしておいたベニアのテーブルがバラバラになって

しまっていたのをかたづけていたら、カラスさんがやって来たので、よおよお、

って言ってみたら、右の方の建物の屋根に飛び去って、そこからこっちを見てて、

また、声をかけると、今度は左の方へ飛んでって、そこの屋根からこっちを見て

から向こうへアホー、とか言いながら飛んで行った。

ねこさんの方は、こないだ新若とらに絶壁に追い詰められたバットマンが

あれから、事務所へ上がって来ないようで、若とらがたまーに来るだけだ、って

シャンさんが言ってた。

来週からはこのコラム、きょうののらがらす、に変わるかも知れない。


とはいうものの明るいニュースも、先週末、いつものようにねこさん探して、

ベランダからあたりを見回してて、シャンさんに言われた、ねこけもの道の方を

見てみると、同じようなくろの小さいのが2ひきでそこにいた。

おーおいおい、って声をかけた。

(けっきょく、ねこならだれでもいいんかい、古いねこの立場はどーなんだ)


「古いひとたちの」のことを忘れたわけじゃないんだけど、ねこさんの方が、

みんな、すごくさっぱりした性格なんで、ずっと来てても、別なとこでもっと

うんまいもんでも出してもらえると、来なくなっちゃって、そこで会って、久し

ぶり、って言っても、だれだっけこの人、って態度なもんで、こっちも、

ねこさん、どこにいたって、幸せでいてくれりゃいいか、って達観の境地なのだ。


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