7/12ののらねこ         文は田島薫



きょうもお客さんたちは顔を見せない(先週と同じ書き出し)。

真っ白な皿にエサをついで、青磁風の器に水を入れて待っているけど。


仕事(ほどのもんではないが)をしながら、ドアの方に聞き耳を立てて

いると、かーかー、と声をかけるお客さんがいる。

いつも来るカラスさんだ。

もっとも、いつも同じ人物(?)だとの保証はできないんだけど。

いつも窓のすぐ先のベランダの手すりに止まって、こっちが、おーい、

カースケ、などと声をかけているのをしばらく不思議そうに首をかしげたり

しながら聞いていてすぐには逃げない。


ねこさんは来ないのかっ、て時々ドアの外へ出てカラスさんがたっぷりこぼ

したエサを皿に戻してはベランダの外を見回す、と、また、いりおもてやま

ねこ発見、こないだと同じ若とらだ。

エサ見せながら、上がって来いよ、って言って手招きするが、こっちを見てる

だけで、こないだと同じ。

こっちとしては、今度はぜひ上がって来てもらわないと、きょうののらねこ

話に盛り上がりができない、といった危機感(?)から、少し熱心にすすめて

みると、初めまんまるだった目がだんだんしょぼしょぼ細くなって、今いる

屋根の上に座りこんだ。


これなら大丈夫、と、しばらくしてから行ってみると、おー、エサがさっき

より減ってる、って思ったら、皿の外にたっぷりこぼれていた。


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