7/5ののらねこ         文は田島薫



きょうもお客さんたちは顔を見せない。

来るのは涼しくなった夜だけのようだから、だいたい昼間しかいない

われわれは彼らに会うことが難しくなってしまった。

今や、彼らはいりおもてやまねこのような存在になっちゃってるのだ。


これじゃ「きょうののらねこ」が書けない、次の手の「のらどり」を

って思っても、とりさんもどういうわけか、誰ひとり顔を見せない。

とりさんたちも、ねこさんたちの穴埋めに書かれるのは少しプライドが

傷つくというので、こんな時はなるべくエサ皿に近づかないようにして

るのかも知れない。


時々ドアの外へ出てみる。

夕方、ドア前のベランダから下を見ると、ねこけものみちに、

いりおもてやまねこ発見。

このへんのいりおもてやまねこは、声をかけると、立ち止まって、

こっちを見る。ひさしぶりの若とらだった。

あ、こないだゴーギャンの森にいたのもこれだ、きっと。


エサ皿を見せてこっちへ上がって来いよ、って言ってみたけど、ただ

こっちを見てるだけで、食べ物に興味なさそうだった。


ひっこんで、しばらくしてエサ皿を見てみると減っていた、って

書きたかったんだけど、全然減ってなかった。

暑い夏のねこはだいたいこんなもんで、小話におちがつかない。


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