8/2ののらねこ         文は田島薫



お客さんたちはどうやら長期夏休み取ってどっかへ避暑に出かけているようだ。

でも、バットマンと若とらだけは出かけてないことがわかっている。


先週も夕方ビール買いに行こうとドアの外出たら、素早く若とらがベランダの

奥へ逃げてこっちをうかがっているところだった。

おー、若とらひさしぶりだな、どーしてたの?などと話かけたら、じっと

こっちの話してるのを聞いて、理解しているようだった。

買い物から帰って来たら、もう若とらは帰っていて、エサはほとんど減って

なかった。

翌日ぐらいにまた、外へ出かけるところ、2階の踊り場から続くねこけものみちの

入り口にいた若とらに会った。

また話しかけると、じっとこっちの顔を見ながら、にゃー、と言った。


小雨の降った木曜の朝出勤したら、となりの建物のベランダにバットマンがいる

のに気がつき、ちょっちょっ、と言ってみたら、ちらっとこっちを見ただけで、

何かじっと向こうの下の方に目をこらしたまま、こっちが、おいバットマン、

おいおいバットマン、っていくら声をかけても無視されてしまった。

どうでもいいあいさつしてるよりも、彼は、もっと大事な用をしていたのだ。


その後、小雨の中、近所の郵便局へ行って帰って来たら、七曲がりの路地の家で

飼われるようになったまだらに、ひさしぶりに会ったので、おー、元気?と

声をかけたら、全然、私を覚えていないようで、何だろうこの人は、って顔で

どんどん足早に逃げて行き、そばの車の影に隠れてしまった。

あれ、前は、毎日のようにうちにエサを食べに来てたじゃないか、って言っても、

それがどーしたい、って、ねこさんはさっぱりした性格なのだ。


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