4/26ののらねこ         文は田島薫



朝出勤すると先週ブラウンが寝ていた隣の建物のベランダでバットマンが寝ていた。

ドア前の皿はきれいに洗ってあったけど、エサはまだ入れてなかった。

朝1のシャンさんは、きょうは全然お客さん見えない、って言うので、下のベランダ

にバットマンがいたよ、って言うと、あ、そー、と不思議そうにドアの外へ出て

確かめるつもりのようだったから、いっしょに出て、ほらね、って言おうと、したら

さすが瞬間移動のバットマン、もうさっきの場所にはいなかった。


あんなとこ入っちゃって、ってシャンさんが言うので、え、どこ、って聞くと、

ほらエアコンの室外機の下、小柄なバットマンはベランダにあったそれに、すっぽり

体を入れ首だけこっちを向けている。


皿にエサを入れて、一応バットマンに声をかけて、しばらくすると、ベランダで一服

して来たシャンさんが、だれか来たみたいエサが少し減ってる、って言うので、

見てみると、その通りなんだけど、まわりに大分こぼれているから、とりさんだ。


ねこさんは来ないのかな、ってベランダから下を見てみると、ねこけものみちに、

鈴白がいて、すぐ手前の物置きの屋根にくろとらがいて、となりのベランダの室外機

にはまだバットマンがいて、その全員が私を見上げている。

急に注目を浴びた私は何かして上げなくてはいけない、と使命感にかられ、そだ、って、

後ろに戻りエサの皿を持って同じ場所から、ほら食べにおいでー、って言おうと

思い、手にエサをすくって、ほら、…って言いかけたらもう下にくろとらはいなくて、

鈴白はねこけものみちを向こうへ歩いて行くところだし、バットマンはもう知らん顔で

こっちを向いてない。

おいおいしろしろ、バットマンバットマン、って声かけたけど、だれもこっちを

むきゃーしゃせん。

さっきの一心にこっちに何か指示を仰いでたようなあんたがたの目は何だったんだ。


またしばらくたって、となりのベランダを見たら、瞬間移動のバットマン、今度は

朝パン屋さんで見るような大きなプラスチックケースの中で寝ていた。


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